kmokudaiの読書日記と雑録

もともと読書日記としてはじめたので読書日記に戻します.あと,ちょっとした思いつきなど.研究っぽい話しは,https://researchmap.jp/kmokudai/研究ブログ/に書いてます

博物館と地理学とサイエンスコミュニケーション

東洋大学で,地理学会.
地図学博物館のシンポ.箱ものはもう作れないので,デジタル化の方向だそうである.
自然史系博物館は,日本には約200館以上ある.そこには地質学・鉱物学か生物学の研究者が多く在籍している.そして,それぞれの分野には「分類学」としての知識と技術の蓄積がある.しかし地理学には,キュラトリアルワークの蓄積はない.そういった業界が大規模な国立博物館の運営を任されても,うまくいくかどうかは分からない.無論,場が与えられれば,そこで人が育つということはあるので,場所があることに越したことはないが,何もないところから新しいものを作るのは,なかなか大変なことだと思う.
博物館の役割として,コレクションとコミュニケーションがある.これまで,多くの博物館でコレクションに軸足がおかれており,コミュニケーション(サイエンスコミュニケーション)にはそれほど重点が置かれていなかった.しかし,社会情勢の変化(学校教育以外の教育機会の場の必要性)や,科学のブラックボックス化に伴う,各個人における生活者の視点での科学的知識の再構築など,様々な機関,研究者と市民とをつなぐ,サイエンスコミュニケーションの場が求められている.博物館のこれまでの活動の歴史を考えれば,その延長線上に,このサイエンスコミュニケーションのフレームはのってくるだろう.
地理学の分野がその中心となる博物館が社会から必要とされるようになるためには,既存の博物館で地理学の教育を受けたものが,そのユニークさを活かした活動を行い,それが評価されていくことが必要だろう.身近な自然や,様々な現象に関して,そのつながりを伝えるという仕事は,地理学の教育を受けたものは,比較的容易にできると思う.そういった意味で,サイエンスコミュニケーションが求められる現場に,もっと地理学の教育を受けた人間が入っていくようにするべきだろう.