kmokudaiの読書日記と雑録

もともと読書日記としてはじめたので読書日記に戻します.あと,ちょっとした思いつきなど.研究っぽい話しは,https://researchmap.jp/kmokudai/研究ブログ/に書いてます

サイエンスコミュニケーター養成の現在

日本科学未来館で行われたワークショップに参加して発表.大学などのサイエンスコミュニケーター養成講座などの実践報告.認知度を高める,横のつながりが必要などの意見がでる.
情報の発信元である研究者に,インセンティブをどうあたえるかをもっと考える必要があるのではないか?
以下,私の発表レジュメ.

3.目代・○○グループの感想
この研修では,科学コミュニケーションに関する講義を受け,前述のテーマで,来館者の前で約15分の実演を行った.ここでは,この研修プログラムを通じて,科学コミュニケーションについて考えたことを述べる.以下の文章は,○○と目代で議論した内容を踏まえたが,目代の個人的な感想を元に書かれており,文責は目代にある.
3-1. 何を伝えたいのか?
研修で行われたような実演が,科学コミュニケーションの実践活動として成立するためには,科学情報を発信する側が実演のテーマに関して受け手の反応を意識し“**を伝えたい”,そして“コミュニケーションをとりたい”と主体的に思うことが必要であろう.伝えたいと思う動機は,そのテーマに対しての理解がなければならない.そして,相手と自分の立ち位置をはっきりとさせなければならない.研修をより効果的にするため,主催者側は課題を事前に提示し,研修参加者は事前に情報収集して伝えたい気持ちの醸成をしておくことが必要であろう.
3-2. 誰が科学コミュニケーションを行うか?
科学コミュニケーションの基本的な形態として,研究者(専門家)と非専門家との間でのコミュニケーションがある.これまで研究者による研究成果の公表方法は論文を公表することとほぼ同義であったが,今後は,研究者自身が研究のおもしろさ,社会的意義を非専門家に直接伝え,それに対して様々な人からの意見を聞くということが研究者にとっても,社会にとっても重要になっていくだろう.また“科学コミュニケーター”が独自の視点により様々な分野の科学情報を収集,再構築しその連関性やおもしろさを情報発信することもあるだろう.他にも様々なあり方があると思うが,科学コミュニケーションは,取り組む人の立場によってその実践形態は異なるのだと思う.この研修は,様々な人に向かって開かれているものであるので,今後,研修者の立場(ニーズ)に応じたプログラムが開発されることを希望したい.
3-3. なぜ科学コミュニケーションが必要か?
研修を受けるまで科学コミュニケーションに対して十分な知識がなかった人は,研修に参加したことによって,科学コミュニケーションの意味を知り,その意義を評価することになる.科学コミュニケーションに対して消極的だった人が,研修を受けたことによって,その重要性を認識し,積極的に行動するようになれば,この研修制度の意義は広く認められ,継続的に実施されると思う.そのためにも科学未来館独自の“科学コミュニケーション論”があって良いと思う.そのユニークさを生かした,オリジナルな科学コミュニケーション哲学が確立されることを期待する.

当日の様子など.北大のCostepのサイト

帰ってきてから標本館のスタッフと話していて考えたこと.今回のワークショップで中心的な話題になっていた,教育,人材育成に関する内容は,人材の受け入れ側にはどのように映っているのだろうか.大学ではサイエンスコミュニケーションの認知度はそれほど高くはないにしても,これらのプログラムが進行している現状を考えると,ある一定の人は認知していると思う.しかし,実感として,理系のいわゆる国研では,おそらくサイエンスコミュニケーションという言葉そのものが知られていないし,関心も高くない.教育機関にとって見れば,育成した人材を送り込む大口の顧客が公の研究所だろう.今回のようなワークショップは,そういった機関のそれなりに偉い人(将来の展望を考えなければならないような人)を交えて行い,ニーズがどこにあるのかを探ることをした方がいいのではないか.