kmokudaiの読書日記と雑録

もともと読書日記としてはじめたので読書日記に戻します.あと,ちょっとした思いつきなど.研究っぽい話しは,https://researchmap.jp/kmokudai/研究ブログ/に書いてます

地質標本館 日本におけるドイツ年イベント

2005年から2006年にかけては,「日本におけるドイツ(Deutschland in Japan)年」です.ドイツを紹介するイベントが日本各地で開催されています.日本の地質学史を紐解くと,その草創期には,ドイツ人地質学者であるナウマンの活躍がありました.また,現在では,地質調査総合センターとドイツ連邦地球科学天然資源研究所(BGR)との交流があります.そういった関係をふまえ,地質標本館では 1月26日から4月16日まで標記の特別展を開催しました.また,3月26日には普及講演会を実施しました.
特別展は,日本の地質学の草創期についての展示と,ドイツ連邦地球科学天然資源研究所と地質調査総合センターとの活動を紹介する展示とからなります.前者は,地質学史の分野で精力的に活動されている矢島道子氏の協力を得て,ナウマンがお雇い外国人として来日し,どのような仕事をしたのかを,当時の図表や写真を使ってわかりやすく解説されています.日本の地質調査所設立について建議したのは,このナウマンですが,その経緯や,設立当時の状況についても詳しく述べられています.後者の両研究所の研究紹介では,地質図作成,放射性廃棄物処理問題,資源開発,災害研究など分野毎に成果が示されています.両国の研究を対比することにより,その到達点や今後の課題などが浮き彫りになっています.
講演会では,展示物作成で協力して頂いた矢島道子氏に「ナウマン−日本の地質学の草創期」と題して講演して頂きました.ナウマンの人となりや,ナウマンが日本で行った研究がどのように評価されてきたのか.さらに明治期における日本の地質学界とナウマンの置かれた状況について,矢島さんの最近の研究成果をふまえて大変興味深い講演が行われました.続いて,地質情報研究部門の高橋雅紀氏により,「過去(2000万年前)にさかのぼって今(地震防災)を知る」と題して,関東平野の地下構造に関して,最新の研究成果をふんだんに盛り込んだ講演がありました.最後に,地質標本館の青木正博氏により,「ドイツにちなんだ鉱物」と題して,ゲーテなどのドイツの有名人や地名にちなんだ鉱物の紹介がありました.先だってBGRから贈られた重晶石と岩塩鉱物の標本 (GSJニュースレターno.18参照)の紹介も行われました.この講演会には,遠方からの参加者も見られ,会場はほぼ満席となりました.会場では,ナウマンの資料集や矢島道子氏の著書の販売,ドイツ年記念ピンバッチの配布も行われました.講演会が終わった後も,参加者が講演者を囲み,質問が続き,盛況の内に閉会となりました.来館者の方々には,地質学の多面的なおもしろさを理解して頂けたと思っています.(ニュースレター草稿)