新刊「中部・近畿・中国・四国のジオパーク」

古今書院が出している「地理」で,2011年5月から2013年8月にかけて,「ジオパークを歩く」という連載を行った.この連載は各地の人にそれぞれのジオパークの見所を紹介してもらうというものだった.その時,その連載を全4巻のシリーズものにして古今書院が発行することになり,オーガナイズした縁もあり,そのシリーズ監修をすることになった.自分で全部書いたシリーズ本の編者にはなったことがあったが,人が書いた原稿を集めて本にして,その編集,監修を行うのははじめて.古今書院さんもがんばってくれて,2000円台で刊行することができた.

ジオパークでは,「ジオストーリー」が大事だと,いつの間にか言われるようになったが,それがそもそも何なのかということは,よくわからない.それを理解し質の高い者にしていくためには,まずはそれぞれのジオパークの中で活動されている方に,それを語ってもらい,それを見て考えるしかない.実際にこの本の編集をしてみて,それぞれの地域でジオストーリーがどのように考えられているのか,ぼんやりとながらイメージがつかめてきた.誤解を恐れずにかけば,「地域のシステムを意識した,地球科学+人文地理学をベースにした地誌のようなもの」といえる.「検証が不十分な人文地理学の仮説」のようなものもある.今後,そのジオストーリーに関して,どれだけ証拠を用意できるのかということは,地域できちんと調査,研究ができるのかということ同じことである.また,面白いジオスト―リーとは,独自の視点で地域を語ることであり,そうしたものが生まれてくるようであれば,ジオパークのおもしろさの幅が広がっていくことになるのだろう.

いつまでもスタート時に構成したジオストーリーをそのまま語っているようでは,進歩がない.ジオ資源を掘り起こし,調査を進め,価値を高め,地域の様々な事象との連関を新たに見出す.そして以前よりも一回りスケールの大きなジオストーリーを構築していく.こうした活動が連続的に行われていることが,ジオパークの活動にとって重要なことであろう.

 

助成財団に関する研究

現在の勤務先は,助成財団なのだが,助成財団を対象とした研究は,それほど多くない.それぞれの財団のカラーがあるため,一概に傾向を論じにくいが,そうであっても研究動向やその時の社会情勢などをよく反映した採択案件になっているため,そういったデータを分析すれば何らかのげんしょうが語れると思うのだが.

最近目にした助成団体に関しての論説.

矢野孝一(2014)市民の公益活動を支援する助成団体等に関する考察―我が国における助成団体の類型化と、事業助成の現状と課題―.龍谷大学大学院政策学研究3:215-228.

日本ジオパーク全国大会南アルプス大会

日本ジオパーク全国大会が,南アルプスジオパークで開催された.そこで分科会「ジオパークユネスコエコパーク」のオーガナイズを行う.

当日の講演者のスライドは(協力が得られれば)

講演の記録: 日本ジオパーク南アルプス大会分科会E

にまとめる予定.

このセッションでは,特に南アルプス,白山など日本GP(日本国内での認定)とBR(世界での認定)の重複地域地域を持つ地域が,今後どのように整理をしていくのかということを念頭に置いてプログラムを組み,議論をすすめた.

ジオパークは,現在ユネスコ正式プログラム化に向かって進んでおり,その中の議論でGPとBR(世界遺産も)について重複する場合は相乗効果による価値付けが必要となる.相乗効果について,どのようなものを指すのかは明確ではないが,これまでの事例で言えば,オーストラリアのウルルーカタージュタ国立公園が,1987年に世界自然遺産に登録されていて,その後先住民族がこの地を聖なる山として崇拝していることからその価値を評価し世界文化遺産に指定し,結果的に複合遺産になり,よりこの地の価値の評価が適切に行われるようになったようなことなどが,相乗効果の例として考えられる.

このように考えると,現在BRに指定されている南アルプスで,GPの範囲を3県に広げ,その上で世界GPを目指すということはありえるのだろうか?ユネスコの動きや現在のGGNでの議論などを踏まえると,恐らくというかほぼないだろう.現在は日本GPという国内認定なので,併存しているが,世界となると併存の可能性は,積極的にそれをした方が良いという理由がないので,ないと考えて良いだろう.特に南アルプスの場合は,GPが3県に拡大すると現在のBRの範囲とほぼ近いものになる可能性が高い.同じ範囲で二つのプログラムを走らせるというのはないだろう.

さらに,南アルプス地域では,静岡県が中心となって世界遺産の登録も目指している.しかし,こちらも全域がBRとなった以上,こちらの芽ももうないと考えて良いのではないか.世界遺産の候補地が,IUCNの審査をうけたのち,世界遺産ではなく,他のプログラム(ジオパークやBR)を勧められるということが,世界遺産委員会で起こっている.これは,いずれかを選べということであって,ユネスコの中で複数プログラムの重複を勧めないということの現れであろう.

これから新たな登録,認定を目指す地域は,決断が迫られている状況ともいえる.

International UNESCO Conference on Global Geoparksの発表

カナダストーンハンマーで9/19〜22の日程で,International UNESCO Conference on Global Geoparksが開催される.

最近,北海道地図とつくったジオパークカードについて発表.もともとこの企画は,私のカード好きに由来するが,その後いろいろかんがえてみると(理屈をつけてみると),石のお土産をなくすことや,ジオツアーへの参加を促すことにもつながる.また,教育のツールにもなる.ということで,ジオパークの基本的なコンセプトに合致するものという話になった.その辺の内容を発表.質疑応答では,無料で配ってしまうと,石のお土産を減らすことにはならないのではないかなど指摘される.

会場では英語版ジオパークカード(今回特製)を配布.カードの作成では,隠岐のTeresaさんに校閲をしていただいた.また,発表原稿の英語は,(直前に)伊豆半島のAbhikさんにチェックしていただいた.ありがとうございました.

 

災害を題材にした小説・ルポ

課題用リスト.

1. 吉村 昭「三陸海岸津波

三陸海岸大津波 (文春文庫)


2. 吉村 昭「関東大震災

関東大震災 (文春文庫)


3. 井上 靖「傾ける海」

傾ける海 (角川文庫 緑 216-27)

4. 井上 靖「小磐梯」

補陀落渡海記 井上靖短篇名作集 (講談社文芸文庫)

4. 三浦綾子「泥流地帯」
5. 石黒燿「死都日本」
6. 石黒燿「震災日本」
7. 石黒燿「昼は雲の柱」→「富士覚醒」
8. 高嶋哲夫「東京大洪水」
9. 高嶋哲夫「M8」
10. 高嶋哲夫TSUNAMI津波
11. 新田次郎昭和新山
12. 新田次郎「火の島」
13. 新田次郎「怒る富士」
14. 池澤夏樹「真昼のプリニウス
15. 江川紹子「大火砕流に消ゆ」
16. 鎌田慧「大災害!」岩波書店
17. NHK取材班(1987)「全島避難せよ ドキュメント伊豆大島大噴火」日本放送協会
18. 河原れん(2012)「ナインデイズ岩手県災害対策本部の闘い」幻冬社
19. 柳田邦男「空白の天気図」・・・枕崎台風

21. 矢口高雄「激濤―Magnitude 7.7」講談社漫画文庫

激濤―Magnitude 7.7 (上)  講談社漫画文庫

激濤―Magnitude 7.7 (下) 講談社漫画文庫

フィールドワークの醍醐味とジオツーリズムの潮流

G空間EXPO2013 地理空間情報科学で未来をつくる

日本地理学会主催シンポジウム

地理の魅力再発見!~未来を創る地理教育~

会場:日本科学未来館イノベーションホール

招待講演

『フィールドワークの醍醐味とジオツーリズムの潮流』(講演要旨)

 宇宙の歴史の中で,地球が誕生し,そこに生物が育ち,人間が暮らし,文化が生まれたことは,大変な奇跡である.その奇跡を奇跡であると認識するためには,地理学や地球科学の知識が必要である.そしてそれを体感するためにはフィールドワークが必要である.
 これまで地理学者は,目の前に広がる景色,たとえば地形や植生,あるいは文化的な景観がどのようにして作られてきたのか調べ,その結果を研究論文にまとめ発表してきた.しかし,論文は専門家に向けて書かれたものであり,非専門家の人達が目にする機会はあまり多くはなかった.しかし,身近な自然,景観がどのようにつくられてきたのかという問いは,研究者でなくとも多くの人が興味を持つだろう.その問いかけが面白いものであるという事に気づいていないだけではないか.なぜその問いを考えるのかというところまで掘り下げて,専門家と非専門家の橋渡しをする仕組みが作られれば,様々な事象の成り立ち,仕組みなどについての地理学,地球科学的成果が,大きな感動をもって人々に伝わっていくだろう.そういった,自然や文化景観の見方がわかった人の中からは,今度は自らが調査をしたいと思う人も現れてくると思われる.そういったアマチュア研究者を,プロの地理学者がサポートし,増やしていくことは,地球上の地域や,生物・地学的事象多様性の理解を進めることにつながるだろう.
 近年,ジオパークの活動とともに各地で行われているのがジオツーリズムである.地域の持続可能な発展(Sustainable development)を考える中で,地域資源保全を図りつつ,経済的な活動が行えるように,実践が行われてきたものである.地形や地層は,人の暮らしているところにはどこにでもある.そういったどこにでもあるものに対し,科学的な見方から,その価値を見いだし,広め,ツーリズムの対象としようとするものである.日本列島は湿潤変動帯といわれる場所で,世界的に見ると火山活動や地殻変動が活発で,降雨も多い環境変動の激しい.そのような場所では,様々な地形・地層が形成され,それが現在も変化し続けている.そういったものの価値を,ツーリズムという形で,地域の外に人にみせることにより,その地域の人々は自分の住む地域の自然・文化の理解を深めることになる.さらに,ジオツーリズムへの取り組みは,地域の環境保全や防災教育を進めていく上で重要なきっかけとなる.

 

主催者から講演者への質問

1. 楽しみながら地理を学ぶにはどうしたら良いか?
・いま,この場所にそのもの(地球,地質,地形,生物,さまざまな文化的事象・・)があることは,奇跡的なこと.その奇跡には理由がある.その理由を考えて,その思考過程を楽しむ.当たり前に存在するものなどないと思うと楽しめる.

2. 未来の創造にあたって地理教育が果たすべき使命とは何か?
多様性を学ぶことができる科目として重要.

当日のプログラム

14:30~14:35 趣旨説明  村山祐司

14:35~15:05 招待講演1 寺本 潔(玉川大学)『鳥の目を育てれば子どもは地理を好きになる―空間認知を意識した地図・景観指導の提案―』

15:05~15:35 招待講演2 小林岳人(千葉県立松戸国際高校)『高等学校での地理学習とGIS-地味に使ってジワッと効くGIS-』

15:35~16:05 招待講演3 目代邦康(自然保護助成基金)『フィールドワークの醍醐味とジオツーリズムの潮流』

16:05~16:10 コメント  矢ケ崎典隆(日本地理学会会長)

16:10~16:40 パネルディスカッション.パネリスト 寺本 潔・小林岳人・目代邦康・矢ケ崎典隆.コーディネーター 山室真澄(日本地理学会企画専門委員会)

三保の松原の海岸侵食

三保の松原の海岸侵食

http://shimizu-kaigan.net/PDF/2011/20120321_document.pdf