日本地理学会シンポジウム「ジオパークを通して考える科学と社会の関係」

 3/22に早稲田大学で行われた日本地理学会春季大会のシンポジウム「ジオパークを通して考える科学と社会の関係」。地理学会会員でない人にも、多数講演していただき、いろいろ考えることができました。

 松尾先生の話しについては,地域の自然環境保全まちづくりという点で,実際の制度をどのように設計していけば良いかという点で,大変勉強になりました.こうした,成功している事例,失敗している事例などを研究し,日本でも,ジオパークだけでなく,諸制度をどのように活用していくべきか,具体的に考えていく必要があるように思いました.今回のお話しいただいたことをベースにして,それを発展させた形で何かしらの議論の場をつくりたいと考えております.

 そうした発展性のある議論としては,鬼頭先生にご提案いただいた,TGKについても,今後いろいろと考えていきたいと思いました.地理学がこれまで記載してきたものの中から,拾えるものもあると思います.その一方で,多くの地域の地誌を地理学者は記述してきましたが,TGKという視点がなかったため,記載しそこなってきたものも多いと思います.既存の研究の整理と,今後の地域のあり方を考える議論のベースとして,考えを深めていきたいと思っております.

 災害に関しては,総合討論では,属人性の議論など私の興味のあるところでしか,話しをしませんでしたが,自然災害との付き合い方については,今後も深めていかなければいけない議論であり,今回のようなメンバーで議論の場を持つことは,地理学会では,他の学会に比べると比較的容易だと思います.そうした,地理学会の特性も活かして,今後議論を続けていきたいと考えています.

 最後に,渡辺さんに講演いただいた内容についても,十分議論の時間がとれませんでしたが,私は,ジオパークの,サイエンス・コミュニケーションの実践の場としての機能を発揮するためには,専門家と非専門家の間のコミュニケーションも含めて,もっと分析が必要だと考えています.こうした問題についても,今後,考えていきたいと思っております.

 自然保護の問題については,アビックさんのジオパークで先端的な自然保護ができていないという意見と,鬼頭さんの自然保護の枠組みそのものが変化しているという話しは,大変興味深く聞かせていただきました.私も自然保護に関する助成団体に所属しているため,「自然保護」というものが,どのように理解されているか大変気になるところです.アビックさんの指摘のように,確かに日本のジオパークでは自然環境の保護,保全について特に新しい取り組みを展開しているところはありません.一方で,ジオパークになったことにより,そうした活動の重要性を認識し始めた人は多いと思います.そういう意味では鬼頭さんが指摘されたように,「自然保護」そのものの枠組みが変化している過渡期のようにも思えます.この辺は,各地の実態などをみながら,考えていきたいと思っています.

 以下は,シンポジウム後に書いたメモです.
・自然保護は、ある1つのトピックではなく、自然との関係性をどう構築するかという文脈で考える。そうすると、小山さんの言っていた保全と防災を1つにまとめるというのもありかも。但し人工構造物の問題など、検討が必要。
・研究者の役割。現地に長く入って研究を続ける傍ら教育活動などを進めていく(町田さんの実践に基づいた発表)。こうした活動がモニタリングになる(鬼頭さんの発言)。
・松尾先生(専修大)のイギリスの国立公園の調査結果は、大変興味深い内容。再生産が不可能な国立公園に対してナショナルトラストが外部と国立公園をつなぎ、国立公園が維持されている。日本と同じ地域制国立公園で、さらに後発でここまでの違いが生まれる背景は?
・防災やアダプティブマネジメントには、スキルの高い研究者が必要だが、中心となる人物の能力に依存するのでは。しかし、良い実践を積み重ね、情報を共有することで、属人性問題は解消できるだろう。
・今回のシンポジウムの内容は、ジオパーク地域資源の特集に。