北海道の環境と地学

 北海道は,日本列島の中で南西諸島とならび豊かな自然環境が広がる大地である.亜寒帯(冷帯)の気候に属し,かつての氷期の影響を受け,生物相や地形などが本州と異なる.地理学や地質学,生態学にとっては非常に興味深いフィールドであり,これまで多くの研究が行われてきている.その成果は,小野有五・五十嵐八枝子(1992)「北海道の自然史」や,東正剛ほか編(2003)「生態学からみた北海道」,小疇 尚ほか編(2003)「日本の地形2北海道」,日本地質学会編(2010)「日本地方地質誌1北海道地方」など,入門書や専門書として数多く刊行されている.今回,そこに新たな一冊が加わった.
 この本の章立ては以下の通りである.第1章 北の気象と天気,第2章 川,湖と海,第3章 北の山,第4章 火山と温泉,第5章 北の地形,第6章 雪層と地層,埋もれた文化と化石,第7章 岩石・鉱物・鉱床,第8章 地震,第9章 経験から科学へ−防災と自然エネルギー研究−,第10章 北海道の生いたちと今後.気候から,地形,地層,災害,そして先住民やエネルギー問題など,地学現象と環境について幅広く書かれており,著者の広い興味と見識が伺える.本書では,写真や地図が多く使われている.これは,読者が自ら学べるようにという著者の考えに基づくものである.この本は,広い分野について書かれており,北海道の自然について概観することができる.しかし,地形図の使い方などいくつか気になる点も存在する.ここではその点について指摘したい.
 一つは,地形図に縮尺が示されていないことである.それぞれの地学現象のところで,国土地理院発行の地勢図,地形図などを用いて,該当する範囲を示している.しかしこれらの地図では,スケールが示されておらず,また拡大・縮小の割合も示していないので,地形の規模がまったくわからない.地形図の図幅名が示されていないものも多く,該当地形図を参照するのも容易でない.地形の属性として,大きさは重要なものである.地形図に関する基本的な情報の欠落は大きな問題といえよう.
 ほとんどの記述の中で引用文献が明示されていない点も問題である.文献を引用していても,その書誌情報はない.また,オリジナルと思われる地形分類図など示されているが,同様の理由で,それが引用してつくられたものなのか,独自の調査によるものなのか判断できない.例えば,p.53図?-6 幌尻岳・戸蔦別岳周辺の地形の図は,旧記のカール地形が新期のカール地形よりも下流の標高が低い位置に描かれている.このような分布はありえず,著者に氷河作用に関する誤解があると思われる.

北海道の環境と地学―オホーツクからの発信

北海道の環境と地学―オホーツクからの発信