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いのちつながれ小笠原

東京都獣医師会による都民公開シンポジウム「いのちつながれ小笠原」に出席.
はじめに,鳥類研究者である森林総研の川上和人氏による島嶼の野生生物保護の考え方についての基調講演.その後,小笠原自然文化研究所の鈴木創氏による,現在のイエネコ対策の実際と,東京都獣医師会の獣医師派遣団団長の高橋恒彦氏による,派遣団の活動の実際についての報告,そして,石田和彦小笠原村副村長による,村の状況の報告があった.
当初,ネコ対策は,ネコを捕殺することで始められたが,獣医師会からのサジェスチョンにより,捕獲しそれを獣医師会が引き取り里親を捜す事業が,各方面の協力により展開された.事業の内容は,獣医師会が派遣団を組織し,年に1度父島母島に診療所を開設.飼いネコの不妊去勢を行い,チップを埋め込む作業を行う.さらに,島では糞のモニタリングとワナの設置を行い,ネコの捕獲を行い,そのネコをおがさわら丸に載せて本土に送り,東京都獣医師会で引き取るというものである.結果的に,ネコを殺してしまうよりも多くの組織や人が関わることとなり,地域住民の野生生物に関する意識を変えていくことまで考えると,これまでうまくやってこれたプロジェクトであった.これまでの2005年から2011年に,ネコは220頭捕獲され,2000頭が本土に送られている.都内の動物病院のうち約100病院が受け入れて飼養や里親を捜しなどを行っている.
最後に行われたパネル討論では,森林総研の川上氏によると,小笠原のネコの事例は,世界的に見てもまれな例であるが,地域の合意形成を考えると大変優れた,またスタンダードにすべき方法であると評価された.これに対し,原則的には外来生物は殺すのが原則で小笠原の例はスタンダードにはなりえないとの意見が出された.小笠原の地域性,特殊性があるのは事実であるが,野生生物の外来種対策については,地域住民の合意形成と協力がないと,作業が進展しないことが多いため,本事例は,地域の問題として希少動物保護,外来種対策の課題を解決する場合には,良い例となるのではないだろうか.