kmokudaiの読書日記と雑録

もともと読書日記としてはじめたので読書日記に戻します.あと,ちょっとした思いつきなど.研究っぽい話しは,https://researchmap.jp/kmokudai/研究ブログ/に書いてます

砂白金

頼まれていた書評を完成させる.

砂白金―その歴史と科学

砂白金―その歴史と科学

著者の弥永芳子女史は,私設の「弥永北海道博物館」の館長であり,貨幣史,砂金掘りを専門とされています.北海道で産出する,砂白金について関心をもたれ,多くの蒐集を収集されています.この本は,その弥永館長の長年の研鑽の結果です.
砂白金とは,白金属元素鉱物[ルテニウム(RU),ロジウム(Rn),パラジウム(Pd),オスミウム(OS),イリジウム(Ir),プラチナム(Pt))が砂状になったものです.砂金のように砂礫とともに堆積しています.日本では唯一北海道で産出しています.
北海道で砂白金が採取されるようになってからの歴史について,特に五,六,八,九章において,様々なエピソードが,記述されています.国産の万年筆がつくられていく過程で,どのようなことが起こっていたのか,砂白金とそれを取り巻く人々の動きが描かれています.全体の構成を考えると,これらをまとめてしまった方が良かったのではないかと思います.七章では,砂白金の分析結果が数多く出ていますが,分析結果からなにが見えてくるかもいま一つよくわからず,本全体からはういてしまっている印象をうけます.全体の構成の中での位置づけが分かるような記述があると良かったのではないかと思います.
北海道の砂白金の地質学的価値については,中川(1994)がわかりやすく紹介しています.また,弥永北海道博物館については,中川(1996)により紹介されています.
中川 充(1994)砂白金の宝庫-北海道はイリジウムの時代.地質ニュース,480号,23-26.
中川 充(1996)日本一の砂白金塊がある弥永北海道博物館.地質ニュース, 506号,60-62.