環境と地質
地質学は,たえず社会との接点をもって発展してきた.国土の開発,資源の開発,災害の素因,廃棄物処理・・.この本は,そのような観点を大事にしつつ,かつ最近の地球科学の成果を踏まえて,わかりやすく書かれている地球科学の入門書である.われわれは,地球上で起こっている多くの現象を目にするチャンスはあまりない.従来の教科書と呼ばれる本では,活字でその現象を説明するため,初学者にはわかりにくいところが多かった.しかしこの本は,多くのカラー写真と,模式的な図をたくさん使い,読みやすい文章で,理解しやすい.以前から指摘されていることだが,日本には,このような教科書・入門書が少ない.地球科学の知識を市民に広め,それを社会に役立たせることの重要性に気がついた研究者が,やがてこのような本をつくるだろう.日本人がつくれば,もっと日本の事例を使った,日本の国土の特異性を描き出す本になるだろう.そのような本が出るのを,この本を読んで待つことにしよう.
- 作者: B.W.ピプキン,D.D.トレント,佐藤正,千木良雅弘,Bernard W. Pipkin,D.D. Trent,全国地質調査業協会連合会環境地質翻訳委員会
- 出版社/メーカー: 古今書院
- 発売日: 2003/11
- メディア: 大型本
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