VORG論文集「阿武隈・北上山地の地質構造発達史」ヴァリスカン造山運動研究グループ.1999.

産総研の図書室で標記論文集をみつけた.「はじめに」にこの本の特徴が記してある.

「学問・研究の自由」に抵触しかねない学術査読制度のあり方に関わって,複数の国内学術誌に投稿拒否された原稿も4・5も下らない.変成岩石分野での,特に交代作用,ミグマタイト(中略)等での査読者との論争と通じ,わが国斯界の後進性をいかんなく思い知らされた経験を私どもは持っている.「査読公開」申請あるいは日本学術会議「思想と学問・研究の自由」委員会への提訴も幾度となく考慮したことがあった.この本にはこれらの「拒否」論文も掲載している.この意味では私どもは「思想と学問・研究の自由」を全うし,自らの考えを変節することもなく表現できた文字通り「自由闊達な本」である.(渡邉順)

北大の地質学教室で湊正雄の薫陶を受け,阿武隈北上山地の地質の調査をすすめた研究グループの論文集.当たり前だが,論文に書かれることは,その人の「科学観」によってたつ.地球科学では,多かれ少なかれ「群盲象を撫ず」なので,結論は,その背景にある思想,世界観に強く左右される.「はじめに」に書かれているような,論文のリジェクトに関する問題は,思想的な対立構造で捕らえることも可能であるが,それよりも,地球科学が潜在的に持つ問題であると思われる.リジェクトされて日の目を見ないものが多いのだとすれば,後進が仕事を評価できないので,大きな損失.そういった意味では,このような論文集のもつ意味は大きい.