環境漁協宣言

これまで,漁協とは,ダム建設時に補償を求める際の受付窓口か,釣り人に入漁券を売る窓口としか認識していなかったが,認識が甘かった.矢作川漁協は,創立100年を記念して100年史を編纂した.それが環境漁協宣言である.そもそもこの矢作川漁協は,農業用水ダム建設が天然アユの遡上を阻害したため,魚道の設置を求める組織として漁業保護組合としてスタートしている.100周年で「環境漁協」を宣言するのも長い歴史の積み重ねがあってのもの.明治以降,川は行政のものであり,官僚による川の管理が行われている.川の環境は,そこに住む主体としての住民があってこそのものであり,生活の場として川のことを考えている漁協こそが川の環境を積極的に語れるのであろう.
これまで,日本の多くの川で砂利採取が行われ,現在河床では砂利が枯渇した状態になっている.矢作川での同様に河床低下,河床のアーマー化が進み河川環境が著しく悪化している.このような問題は,多くの河川で何の対応策も講じられていないが,ここ矢作川では,砂利投入実験など行い,問題解明に真摯に取り組んでいる.そこには河川を釣場としてのみ見るのではなく,生物生育環境として捉えていこうとする視点がある.
漁協の通史,矢作川流域の民俗,環境問題,河川行政,魚類生態など,関連する事項が,網羅されている.
地誌構成論などの議論は進んでも,おもしろい地域のモノグラフがほとんど書けない地誌学とはなんなのか.編者の力量か.中心人物の一人が同年代と知ってショックを受ける.

環境漁協宣言―矢作川漁協100年史

環境漁協宣言―矢作川漁協100年史