フィールドワークの醍醐味とジオツーリズムの潮流
G空間EXPO2013 地理空間情報科学で未来をつくる
日本地理学会主催シンポジウム
地理の魅力再発見!~未来を創る地理教育~
招待講演
『フィールドワークの醍醐味とジオツーリズムの潮流』(講演要旨)
宇宙の歴史の中で,地球が誕生し,そこに生物が育ち,人間が暮らし,文化が生まれたことは,大変な奇跡である.その奇跡を奇跡であると認識するためには,地理学や地球科学の知識が必要である.そしてそれを体感するためにはフィールドワークが必要である.
これまで地理学者は,目の前に広がる景色,たとえば地形や植生,あるいは文化的な景観がどのようにして作られてきたのか調べ,その結果を研究論文にまとめ発表してきた.しかし,論文は専門家に向けて書かれたものであり,非専門家の人達が目にする機会はあまり多くはなかった.しかし,身近な自然,景観がどのようにつくられてきたのかという問いは,研究者でなくとも多くの人が興味を持つだろう.その問いかけが面白いものであるという事に気づいていないだけではないか.なぜその問いを考えるのかというところまで掘り下げて,専門家と非専門家の橋渡しをする仕組みが作られれば,様々な事象の成り立ち,仕組みなどについての地理学,地球科学的成果が,大きな感動をもって人々に伝わっていくだろう.そういった,自然や文化景観の見方がわかった人の中からは,今度は自らが調査をしたいと思う人も現れてくると思われる.そういったアマチュア研究者を,プロの地理学者がサポートし,増やしていくことは,地球上の地域や,生物・地学的事象の多様性の理解を進めることにつながるだろう.
近年,ジオパークの活動とともに各地で行われているのがジオツーリズムである.地域の持続可能な発展(Sustainable development)を考える中で,地域資源の保全を図りつつ,経済的な活動が行えるように,実践が行われてきたものである.地形や地層は,人の暮らしているところにはどこにでもある.そういったどこにでもあるものに対し,科学的な見方から,その価値を見いだし,広め,ツーリズムの対象としようとするものである.日本列島は湿潤変動帯といわれる場所で,世界的に見ると火山活動や地殻変動が活発で,降雨も多い環境変動の激しい.そのような場所では,様々な地形・地層が形成され,それが現在も変化し続けている.そういったものの価値を,ツーリズムという形で,地域の外に人にみせることにより,その地域の人々は自分の住む地域の自然・文化の理解を深めることになる.さらに,ジオツーリズムへの取り組みは,地域の環境保全や防災教育を進めていく上で重要なきっかけとなる.
主催者から講演者への質問
1. 楽しみながら地理を学ぶにはどうしたら良いか?
・いま,この場所にそのもの(地球,地質,地形,生物,さまざまな文化的事象・・)があることは,奇跡的なこと.その奇跡には理由がある.その理由を考えて,その思考過程を楽しむ.当たり前に存在するものなどないと思うと楽しめる.
2. 未来の創造にあたって地理教育が果たすべき使命とは何か?
・多様性を学ぶことができる科目として重要.
当日のプログラム
14:30~14:35 趣旨説明 村山祐司
14:35~15:05 招待講演1 寺本 潔(玉川大学)『鳥の目を育てれば子どもは地理を好きになる―空間認知を意識した地図・景観指導の提案―』
15:05~15:35 招待講演2 小林岳人(千葉県立松戸国際高校)『高等学校での地理学習とGIS-地味に使ってジワッと効くGIS-』
15:35~16:05 招待講演3 目代邦康(自然保護助成基金)『フィールドワークの醍醐味とジオツーリズムの潮流』
16:05~16:10 コメント 矢ケ崎典隆(日本地理学会会長)
16:10~16:40 パネルディスカッション.パネリスト 寺本 潔・小林岳人・目代邦康・矢ケ崎典隆.コーディネーター 山室真澄(日本地理学会企画専門委員会)
ボルネオの<里>の環境学
最近,ボルネオで調査を始めました.大阪市立大学の祖田さんと「了解可能な物語をつくる―河川災害とつきあうために」という論文を書きました.書いたとはいっても,構成やほとんどの内容は,祖田さんのもので,そのうちの1節「地形学的知見からみたラジャン川」について,調査を一緒にさせていただいた関係で,連名とさせてもらいました.
祖田亮次・目代邦康(2013)了解可能な物語をつくる―河川災害とつきあうために.市川昌広・祖田亮次・内藤大輔編『ボルネオの<里>の環境学―変貌する熱帯林と先住民の知』55-94.昭和堂.4200円.
著者割りで購入可能です.ご興味があれば,ご連絡下さい.また書評を書いていただける方も募集しております.
- 作者: 市川昌広
- 出版社/メーカー: 昭和堂
- 発売日: 2013/04
- メディア: 単行本
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GPSのデータ吸い出し
サイエンスアゴラでワークショップ
日本の各地のジオパークにおいて,考古学者の参画があまり進んでいない.行政担当者の中には,考古畑の方がいらっしゃるのだが,その方達は,ジオパークをやるということで,地学のことを理解しなければと考え,アウェーな感じで仕事をされているようである.しかし,基本的なジオパークのコンセプトは,文化財保護行政と割と近いものがあり,考古をしっている行政の方は,実は,ジオパークの今後をううまく回していくために,必須の人材なのだと思う.考古学者が今後ジオパークの活動に積極的に入ってくる道筋が作れればと考え,また,ジオパークコミュニティーの人間に何が足りないのかを考えるため,今回のミニワークショップを企画した.
このスライドは,そのときの趣旨説明のために作ったもの.
ワークショップ 「自然の遺産としての加奈木のツエ」
以下のワークショップを開催致します.ご興味をお持ちの方は,是非,ご参加下さい.
ワークショップ 「自然の遺産としての加奈木のツエ」
目的:四国の室戸半島には,加奈木崩れという大規模崩壊地が存在する.ここは,以前より,崩壊について研究が進められ,最近は室戸ジオパークのジオサイトになり,注目が集まっている場所である.
この加奈木の崩壊地(ツエ)が,地域の自然の遺産として,地域住民に正しく理解してもらえるようになるためには,研究者が情報発信につとめなければならないだろう.ワークショップでは,大規模崩壊地についての地域住民への情報発信と,ツーリズムの素材としての活用にはどのようにすればよいか,研究者,ジオパーク関係者,地域住民とが意見交換をし,その協働モデルをつくることを目的とする.
本ワークショップでは,崩壊地の巡検と,地域住民(含む中学校)での情報発信と意見交換の場をつくる.地形学的な観点や,地域の人たちとの関わりなど,様々な視点で崩壊地というものを考えたい.このワークショップの成果は,今後の室戸ジオパークの活動の中で活かされることが期待される.
後援:日本地すべり学会(申請中),室戸ジオパーク推進協議会
プログラム:
- 11/18(日) 加奈木のツエ巡検
案内者:柚洞一央(室戸ジオパーク推進協議会),目代邦康(自然保護助成基金)
9:00 室戸市役所前集合,9:30 佐喜浜生活改善センター前集合.現地へ移動.
16:00 室戸市役所前解散.
- 11/19(月)
13:00〜14:30 佐喜浜中学校3年生12名を対象にした講演会.
目代邦康「大規模崩壊地のメカニズムと崩壊による河道のせき止め」
池田 宏「流域で土砂移動を考える」
柚洞一央「室戸ジオパークと大規模崩壊地」
ほか
19:00〜21:00 ワークショップ「加奈木のツエについて考える」
会場 佐喜浜生活改善センター(781-7220 高知県 室戸市 佐喜浜町1691)
講演:目代,池田,柚洞.
講演後,近隣住民と意見交換.
世話人:目代邦康(自然保護助成基金)・栗下勝臣(土木管理総合試験所)
参加申し込み
このワークショップへの参加を希望される方は,以下の項目について,世話人の目代まで,11/15までにメールでご連絡ください.
参加申し込み
■参加プログラム(どれに参加するかお答え下さい)
(1. 加奈木のツエ巡検, 2. 地元公民館でのワークショップ)
■氏名(ふりがな)
■所属
■年齢
■性別
■当日現地までの交通手段
保険の手配はいたしませんので,巡検に参加される方は,ご自身でご手配下さい.