kmokudaiの読書日記と雑録

もともと読書日記としてはじめたので読書日記に戻します.あと,ちょっとした思いつきなど.研究っぽい話しは,https://researchmap.jp/kmokudai/研究ブログ/に書いてます

古本の書き込み

最近,古本を通信販売で買うことが多いのだが,つい先日買った2冊がどちらも書き込みのある古本だった.一方は,私の蔵書の中で,最上級の扱いをうけるものとなり,もう一方は,店に送り返して返金して貰った.前者は,貝塚ほか(1963)「日本地形論(上)」地学団体研究会である.この本が,小林国夫の蔵書印が押されているものだったのだ.所々に赤線が引いてあり,書き込みもいくつかある.谷津栄寿の河床礫の研究や,海岸についての記述がチェックされている.本への書き込みは,私的な行為で,人に見せることなど想定していない.そのような秘め事ともいえるものを,のぞき見している気分で,なんとも不思議な感じになる.
同じように,書き込みが多い本を,やはり古本屋の通販で買ったのだが,こちらは,学生さんがいろいろ勉強しながらメモしていたようだ.これは,私の読書の妨げになるので,返金して貰うことにした.同じ書き込みであるが,対照的な対応となった.
以下,解説.「日本地形論(上)」は,東大出版会より出ている「新編日本地形論(1973)」の元になった本である.下があるのかというと,地団研からは発行されていない.はしがきには,「下巻に第2部をふくむが,(中略),第2部はできるだけ地方誌風に書いてみた」と書かれている.見込みで書いたのであろう.結局,この上巻の内容に,その後10年の成果が加えられ,新編日本地形論がだされ,下巻は幻になってしまった.
著者に名前の挙がっている方々は,戦後日本の地形学を牽引された方々である.非常に忙しく,地方誌編を書く時間はなかったと思われる.しかし,その企画は,結局,2000年より刊行された「日本の地形」(全7巻)(東大出版会)として,まとめられることになる.

日本地形論〈上〉 (1963年) (地学双書〈19〉)

日本地形論〈上〉 (1963年) (地学双書〈19〉)


新編 日本地形論

新編 日本地形論

北海道の環境と地学

 北海道は,日本列島の中で南西諸島とならび豊かな自然環境が広がる大地である.亜寒帯(冷帯)の気候に属し,かつての氷期の影響を受け,生物相や地形などが本州と異なる.地理学や地質学,生態学にとっては非常に興味深いフィールドであり,これまで多くの研究が行われてきている.その成果は,小野有五・五十嵐八枝子(1992)「北海道の自然史」や,東正剛ほか編(2003)「生態学からみた北海道」,小疇 尚ほか編(2003)「日本の地形2北海道」,日本地質学会編(2010)「日本地方地質誌1北海道地方」など,入門書や専門書として数多く刊行されている.今回,そこに新たな一冊が加わった.
 この本の章立ては以下の通りである.第1章 北の気象と天気,第2章 川,湖と海,第3章 北の山,第4章 火山と温泉,第5章 北の地形,第6章 雪層と地層,埋もれた文化と化石,第7章 岩石・鉱物・鉱床,第8章 地震,第9章 経験から科学へ−防災と自然エネルギー研究−,第10章 北海道の生いたちと今後.気候から,地形,地層,災害,そして先住民やエネルギー問題など,地学現象と環境について幅広く書かれており,著者の広い興味と見識が伺える.本書では,写真や地図が多く使われている.これは,読者が自ら学べるようにという著者の考えに基づくものである.この本は,広い分野について書かれており,北海道の自然について概観することができる.しかし,地形図の使い方などいくつか気になる点も存在する.ここではその点について指摘したい.
 一つは,地形図に縮尺が示されていないことである.それぞれの地学現象のところで,国土地理院発行の地勢図,地形図などを用いて,該当する範囲を示している.しかしこれらの地図では,スケールが示されておらず,また拡大・縮小の割合も示していないので,地形の規模がまったくわからない.地形図の図幅名が示されていないものも多く,該当地形図を参照するのも容易でない.地形の属性として,大きさは重要なものである.地形図に関する基本的な情報の欠落は大きな問題といえよう.
 ほとんどの記述の中で引用文献が明示されていない点も問題である.文献を引用していても,その書誌情報はない.また,オリジナルと思われる地形分類図など示されているが,同様の理由で,それが引用してつくられたものなのか,独自の調査によるものなのか判断できない.例えば,p.53図?-6 幌尻岳・戸蔦別岳周辺の地形の図は,旧記のカール地形が新期のカール地形よりも下流の標高が低い位置に描かれている.このような分布はありえず,著者に氷河作用に関する誤解があると思われる.

北海道の環境と地学―オホーツクからの発信

北海道の環境と地学―オホーツクからの発信

謹賀新年

旧年中はお世話になりました。
 昨年は,誠文堂新光社より「地形探検図鑑」を上梓しました。日本地理学会のジオパーク対応委員会で,秋にシンポジウム「九州のジオパーク」を企画しました。地学雑誌(東京地学協会)と地図(日本国際地図学会)でジオパークの特集号が発行され,それぞれに報文を出しました。これまで,雑誌「GIS NEXT」で連載していた「地形紀行」を,北海道地図さんにまとめてもらい,小冊子として印刷できました。
 本年は,フィールドにもう少し出て,見聞を広めていきたいと考えております。また,助成財団の仕事も3年目になり,ずいぶん慣れてまいりましたので,新たな取り組みを始めたいと考えております。

学会入会年月日

日本第四紀学会 1992(平成4)年7月1日
 渉外委員
 アウトリーチ委員会
東北地理学会 1995(平成7)年9月29日
日本地理学会 1996(平成8)年5月11日(正会員は2002年9月7日)
 ジオパーク対応委員会委員
日本地形学連合 1998(平成10)年6月1日
日本応用地質学会 1999(平成11)年4月
東京地学協会 2001(平成13)年1月17日
 2009年7月〜 集会委員
日本地すべり学会 2003(平成15)年6月19日
 ??〜2007年12月31日 事業計画部委員
日本地学教育学会 2007(平成19)年7月9日
日本国際地図学会 2010(平成22)年4月1日
 2011年4月〜 編集委員 
野生生物保護学会 2010(平成22)年10月1日
日本地球惑星科学連合
 2010.4〜2012.3 代議員
 2009.4.29〜 環境・災害対応委員会
地理情報システム学会 2009(平成21)年1月27日
 2009.2.20〜 渉外委員会


退会した学会
日本地質学会
日本堆積学会
地学団体研究会
日本地理教育学会
日本生態学会
応用生態工学会
植生学会
日本科学教育学会
砂防学会

有珠山ジオパークガイドブック

世界認定 洞爺湖有珠山ジオパークガイドブック

世界認定 洞爺湖有珠山ジオパークガイドブック


北海道新聞社の記者の方が書かれたジオパークガイドブック.フルカラーで1200円.128ページで見どころがコンパクトにまとめられている.地図の使い方が今ひとつ.土地の起伏を,地図表現を工夫してあらわして貰いたかった.
少々気になるのは,登録と認定の使い方.表紙の最も目立つところに「世界認定」と書かれている.審査を受けて認定であるが,正しくは世界ジオパークネットワーク加盟申請に対しての審査をうけ加盟したということである.世界に認められたから価値があるのではなく,オンリーワンであるから価値があるのである.世界ジオパークネットワーク加盟と主張してもらいたい.